グルメ大国のフランスですが、朝ごはん(フランス語ではプティ・デジュネ=petit déjeuner)に関しては、私たちが思い描くよりもずっと質素な食事です。今回はフランス在住主婦がリサーチした、フランス人の定番朝ごはんの様子や、美容や健康に敏感なパリジェンヌたちの朝食事情についてご紹介します!
フランス人の定番朝ごはんとは?
フランス人の朝ごはん事情はとってもシンプル。私がフランスへ移住した当初、会社へ行く夫のために卵料理とソーセージなどの洋風ブレックファーストを作ったところ、「朝からこんなに食べれないから、頼むから明日から作らないでくれ」と言われてショックを受けた覚えがあります。
のちに、彼の朝食パターンは特別なわけでなく、ごく普通のフランス人のものと理解しました。フランス人の朝ごはんの様子は、大きく分けて下記のような3つになります。
- 朝食はとらない派(カフェなどのドリンクだけ)
- パン派
- シリアル派
朝食はとらない派
パンもシリアルも食べない、朝はカフェだけを飲んで勤務先へ向かう人も意外と多いフランス人。食事を口にしない理由は、「起床直後は食欲が湧かないから」だそうです。
小学校、中学校でも「朝食抜き」傾向の生徒がいるため、毎年新学期に学校側から「朝食は必ず摂らせるようにしてください。午前中疲れやすくなります」というお達しがあるほど。(5人にひとりの生徒は朝食を食べていないというデータあり)恐らく、こういう子供たちがそのまま社会に出て、朝食をとらない派へ移行するのだと思われます。
朝ごはんはパン+ドリンク派
『パン+コーヒー or ココア +フルーツジュース』というのが定番フランス人の朝ごはん。できればブーランジュリーの焼き立てバゲットやクロワッサンを買いたいところでしょうが、朝が慌ただしい若い世代は、前日に購入したバゲットや、スーパーマーケットで売られている市販のヴィエノワズリー(菓子パン)を食べるのが主流です。
朝食用のパンの主流は、おやつみたいな甘いパン。マーケットでは、ブリオッシュ、クロワッサン、パン・オ・ショコラ、パン・オ・レーザン(レーズンパン)など、さまざまなヴィエノワズリーが並んでいます。そこから選んだ好みのパンとカフェで、ササッと朝食を終えるのが一番多いパターンになります。
バゲット派の場合は、バゲットを切り分けバターと好みのジャムをのせてタルティーヌにしたり、バゲットをちぎってショコラ・ショー(ホットチョコレート)やカフェ・オ・レに浸して食べるのがフランス流。
そして、子供がいる家庭であれば、かなりの確率で登場するのが「Nutella(ヌテラ)」です。
ご存じ、イタリアのフィレオ社が販売している、ヘーゼルナッツベースのスプレッド。日本でも販売されていますが、フランス人のヌテラ好きは半端ありません。おそらくフランスの過半数の家庭は常備されている、と言っても過言ではないほどの人気商品です。
しかし最近では、ヌテラに含まれる乳化剤などを気にする人も増えており、同じヘーゼルナッツベースの「Noccilolata」というオーガニック商品も多く見られるようになりました。
シリアル派
子供や女性に人気なのがシリアルです。スーパーマーケットのシリアルコーナーは、目移りするほどさまざまなタイプのものが並んでいます。子供に人気のシリアルはチョコレート系。日本でもおなじみの、ケロッグやネスレの商品が売れ筋です。
そして、健康志向の女性に人気があるのがネスレのフットネス(Fitnesse)です。ビタミンBと食物繊維が豊富な全粒小麦の甘くないシリアルに、好みのフルーツを入れて朝のエネルギーを補充します。
美容に敏感なパリジェンヌたちの朝ごはん
美容と健康に敏感なパリジェンヌたちは、カロリーや素材にこだわる朝食を選びます。その中でも人気なのがミューズリー(muesli)。栄養価のある穀物を中心に、ドライフルーツやナッツを混ぜ合わせたシリアル食品のひとつです。こちらにヨーグルトを入れたり、豆乳を入れてさらにヘルシー度をアップする人もいますよ。
お家で自分好みのフルーツとともにミューズリーを楽しむ以外にも、カフェを利用する人も多くいます。パリにはミューズリーを扱っているおしゃれな朝カフェ、オーガニック専門カフェ、グルテンフリー専門のカフェなど、ヘルシーカフェが数多くあります。
勤め先やオフィスへ行く前に、これらのカフェに寄って、好みのプティ・デジュネを食べる若い女性の姿を見かけることも多いです。
こちらは朝8時から営業しているオーガニック&ヴィ―ガンカフェ「WILD & THE MOON(ワイルド・アンド・ザ・ムーン)」です。パリのセーヌ川右岸に数店舗あり、シリアルやグルテンフリーの食事もとれるパリジェンヌに人気のカフェ。
日曜日の朝はブランチを楽しむ家庭も!
日曜の朝はゆったりと過ごすことが多いフランス。そんな余裕のある朝は、ブーランジュリーの焼き立てバゲットやクロワッサンを購入したり、マルシェ(市場)に寄って新鮮なフルーツや野菜、チーズやパテなどを買って、だらだらと朝ごはん兼ランチを楽しむこともあります。
以前は法律によって(宗教的理由による)お店の日曜営業が禁止されていましたが、パリなどの一部の観光地では、その規制が解除されました。そのため、パリでは日曜日営業のブティックやデパートが増えましたが、地方はまだまだ日曜定休が当たり前。
そんなフランス事情もあって、日曜はせかせかせずに、家族や親せき、友達を家に招待して過ごすのが定番。遅いブランチの場合は、カフェの代わりにワインボトルを開けて、気の合う家族や仲間と一緒に楽しい時間を過ごします。
パリと地方の朝ごはんの違いは?
家庭で食べる朝ごはんについては、パリと地方で大きな差はないと思います。ただフランスの首都であり、国際都市であるパリは、朝早くから営業しているカフェやイートインコーナーのあるブーランジュリーが数多くあります。このような場所を利用して朝食をとるパリジャンは、地方に比べて多いでしょう。
それでも卵料理などの、しっかりした朝食を注文する人のほとんどは観光客。地元の人は、カフェとクロワッサンやタルティーヌですませます。
朝食はいたってシンプルなフランス人
一般的なフランス人の朝食事情をまとめると、こんな感じになりました。
- おやつのような甘いパンが好き
- ランチはしっかり食べるが朝食は軽め
- しょっぱい系は食べない
- 火を使う料理はしない
フランスは夫婦共働きの家庭が日本よりずっと多いため、手間を掛けず簡単に片づけられる朝ごはんが浸透したのでは?と思われます。そのぶんランチタイムは、かなりガッツリ系。そうやって、一日のバランスを保っているのでしょうね。