フランス語では、クリスマスをNoël (ノエル)と言います。革命時以降、政治と宗教は分離されるようになりましたが、今でもカトリックに準ずる祝日が多く残っているフランス。その中でもクリスマスは家族総出で行う大イベント!
今回はそんなフランスのクリスマスの準備や過ごし方を、在仏ライターが詳しくご案内します。
クリスマスの準備
フランスは11月に入ったらクリスマスの装いへ
11月1週目を過ぎる頃から、フランスではクリスマスの装いに移り変わっていきます。
お店のウィンドウは、魅力的なクリスマス仕様のディスプレイに変わり、街の中でも、さまざまなフォルムのイルミネーション・デコレーションが施されます。私の住む街でも、住民税の多くがこのイルミネーションに投入されているのでは?と感じるほど気合の入れようです!
テレビのコマーシャルも様変わりします。午前中は子供向けのおもちゃのCMがバンバン流れ、夜になるとさまざまなブランドの香水の宣伝が流れ、消費者心理を揺さぶります。
スーパーマーケットのおもちゃ売り場は、グッとワイドになり充実度がアップ。家の郵便受けにも、おもちゃ屋、電器屋、宝飾品店など、いつもより分厚いチラシやカタログが入るようになります。
プレゼント
小学生くらいまでのお子さんがいる家庭では、このおもちゃさんの分厚いカタログがとても役に立ちます。子供達は、このカタログをもとに選んだ商品とともに、サンタさんにお手紙を書くのです。自分の欲しい物をゲットするためですから、彼らの目は真剣そのもの(笑)。微笑ましいものがあります。
もう少し大きな子供になると、ガジェット系が多くなります。人気商品は品薄になるので、11月早々に購入する人もいます。そして大人向けプレゼントの定番は、男女関わらず香水が大人気。街中の香水店は、12月に入ると常に人で溢れています。
クリスマスツリー、デコレーションは本格的
画像)Adobe Stock No.295443831
ノエルの飾りつけで、欠かすことのできないのが「クリスマスツリー」です。フランスではサパン・ド・ノエル(sapin de Noël)と言います。本物のもみの木にデコレーションする家庭も多く、11月終わり頃からスーパーでもみの木が売られるようになります。
他にも「crèche de Noël(クレッシュ・ド・ノエル)」を飾る家庭もあります。これはキリストが生まれたシーンを人形で再現しているもの。信仰が深いクリスチャンほど、こちらを飾ることが多いです。
これらの美しいデコレーションを終えると、いよいよノエルが近づいてくると感じます。
マルシェ・ド・ノエル
Marché de Noël (マルシェ・ド・ノエル)といえば、有名なのがストラスブールですね。しかし、そこそこの大きさの街であれば、市の中心地に幾つかのマルシェのキャビンは立ち並びます。このクリスマス市では、ツリーの飾りつけやお菓子、クリスマス用雑貨、ヴァン・ショーなどが売られます。
ノエルが近づく街並みは、美しいイルミネーションとマルシェ・ド・ノエルの温かい灯りで活気が溢れ、どんなに寒くても心が温まるようです。
フランス人のクリスマスの過ごし方
フランス人にとってクリスマスは家族のイベント
日本とフランスのクリスマスで一番違うポイントは、ノエルを一緒に過ごす人たちです。日本では恋人と過ごしたり、友達同士でパーティーをしますが、フランスでは親族一同が集まります。両親、祖父母、伯父、叔母ファミリーなど、集まれる限りが揃って過ごします。
クラシカルな過ごし方は、12月24日、イブの夜に家族みんなで食卓を囲んで、そのあと教会へ行ってミサに参加する方法です。しかし、せっかく親戚一同で集まる日であるため、イブの夜からの短時間ではなく、クリスマス当日のランチタイムから夜中まで、長期戦で過ごす家庭も多くあります。
以前、夫の実家の近くにいた頃は、25日に毎年20~25人くらいの親戚が集まっていました。料理などの用意も大変なのですが、昼から夜中までの長丁場。食べて、飲んで、おしゃべりを半日ぶっ通します。
フランスに来て間もない頃は、夫のファミリーの胃腸は超人級じゃないかと疑ったものですが(笑)、どうやらこれは普通だったようで、休み休みではありますが、ずーっと食べて飲んで過ごします。
在仏日本人の女性にとって、この日は「苦行」と公言する人も中にはいるほど、胃がもたれる日です。
ノエルの定番!フランスの家庭料理とは?
先ほどは、苦行と書いてしまいましたが、食べる量を調節すれば、この日の食事は御馳走です!家庭ごとに多少は異なりますが、クリスマス料理の3つの定番料理をご紹介します。
前菜のフォアグラ
フォアグラは、ノエルの食卓に欠かせない前菜です。12月に入るとさまざまなフォアグラがマーケットにズラーっと並びます。瓶詰タイプや、布に包まったタイプなどです。布に包まっているフォアグラは、保存期間が短いのですが、その分フレッシュ!自分の好みや予算の中から厳選します。
前菜では、フォアグラ以外にもキャビア、スモークサーモン、牡蠣、エスカルゴ、ホタテ、テリーヌなど、複数の料理が使われることが多いです。
メインの七面鳥料理
鶏料理の中でも、ノエルでよく食べられるのが七面鳥の丸焼きです。他にもシャポン、ホロホロ鳥、鶏など、好みで使われます。シャポンとは、去勢した雄鶏のこと。七面鳥よりシットリした肉質なので、最近ではこちらを選ぶ人も多いようです。
鶏のお腹の詰め物は、栗やミンチ、キノコ、フォアグラなど、家庭によって異なります。
メイン料理については、鶏以外にも鴨やビーフなどが食べられる場合もあります。
デザートはビュッシュ・ド・ノエル
丸太の形をデザインしたケーキの「bûche de Noël(ビュッシュ・ド・ノエル)」。生誕したキリストを護るため、夜通し暖炉の薪を絶やさなかった、という由来で、この形になったと言われています。
ロールケーキにクリームを付けて、フォークで樹皮を象るだけなので、家庭でも簡単に作れます。しかしノエルの時期は奮発して、人気パティスリーに注文する家庭も多いようです。
パティスリーのビュッシュ・ド・ノエルは、家庭で作るには難しいフレーバーが揃っていて、見た目も華やか!個人営業の人気パティスリーは、キャパが超えると予約を締め切ってしまうので、我が家でも早めに予約を入れておきます。
1年の情熱をクリスマスの注ぎこむフランス人、そのあとは?
フランスのクリスマスの過ごし方、雰囲気は伝わりましたでしょうか。
フランスも日本も、クリスマスという行事は、商業的戦略のひとつであるとは思います。しかし、上部だけで祝う日本と違い、カトリック的精神が根付くフランスでは、キリストの誕生を祝う1年の中で最も大切なイベントです。どこか神聖な空気を感じるのは、きっとそのせいなのでしょう。
さて、一年の総決算の情熱をクリスマスに向けた後は…、急にショボくなります(笑)。大みそかに友達とパーティーをすることはあっても、年始を祝うイベントはありません。日本のように「明けましておめでとう!」「正月三が日はゆっくり」という雰囲気はなく、カレンダーによっては1月2日からさっさと仕事始め、なんてことも。
クリスマス→年末→正月という、大きなイベントに続けて挑む日本人にとって、このテンションの格差は何年たっても味気なく感じてしまいます。